ADL
- 2026.01.05
- BLOG
数値だけで判断しない診療
― 動物を「診る」ということ ―
私は臨床獣医師として30年以上、多くの動物たちと向き合ってきました。
元気いっぱいの若い時期から、年齢を重ねて生活の様子が少しずつ変わっていく過程まで・・・
とりわけ高齢のワンちゃん・ネコちゃんを本当にたくさん診てきました。
その中で、強く感じていることがあります。
それは、動物医療は検査数値だけで成り立つものではないということです。
検査が「正常」でも、楽に暮らせているとは限りません
近年、獣医療は大きく進歩し、血液検査や画像検査など多くの情報を数値として把握できるようになりました。
それ自体は、非常に重要で欠かせないものです。
しかし高齢動物では、
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検査数値は大きな異常がない
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病名としては説明がつく
それでも、
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動くのがつらそう
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食事に時間がかかる
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表情が乏しくなった
といった変化が見られることが多々あります。
このようなとき、
「数値が問題ないから大丈夫」と判断してしまうと、動物が発している大切なサインを見落としてしまうことがあります。
動物は自分のつらさを言葉で伝えられません
動物たちは自分の不調や苦しさを言葉で説明できません。
だからこそ、
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立ち上がり方
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歩く速さ
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食べ方
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目の動きや表情
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飼い主さんへの反応
こうした日常の細かな変化を丁寧に見ることが、獣医師にとってとても重要だと考えています。
私はこれを、「検査結果の前に、まず動物そのものを見ること」と表現しています。
ADLという視点
当院では、高齢動物の診療において
**ADL(日常生活動作)**という考え方を大切にしています。
ADLとは、
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自分で歩けているか
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食べられているか
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排泄ができているか
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穏やかに過ごせているか
といった、その子が日常生活をどれだけ無理なく送れているかを見る視点です。
これは検査数値と同じくらい、時にはそれ以上に大切な医療情報だと考えています。
飼い主さんの「何となく気になる」はとても重要です
診察の中で、
「数値は問題ないと言われたけれど、何となく元気がない気がする」
「前と比べて違和感がある」
とお話しくださる飼い主さんがいらっしゃいます。
その感覚は毎日一緒に暮らしているからこそ気づける非常に大切な情報です。
当院ではそうした声を軽く扱うことはありません。
むしろ診療の出発点として大切にしています。
高齢期の医療にひとつの正解はありません
高齢の動物医療では、
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積極的な治療を続ける
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負担の少ない治療に切り替える
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痛みや不安を減らすケアを重視する
どの選択もその子とご家族にとって意味のあるものです。
大切なのは、数値だけで結論を出すのではなく、その子の生活とご家族の想いを踏まえて一緒に考えることだと考えています。
当院の診療姿勢として
私たちは、これからも
「数値だけで判断しない診療」
「動物の生活を診る医療」
を大切にしていきます。
「年だから仕方ない」と思う前に、「今の生活は楽そうだろうか?」
そんな視点で、一度ご相談ください。
